風景のない街

志村は映画学科出身で、主に音響を担当し、視覚を音の時空として捉える能力を培ってきた–志村の作品は一見、私的な写真の類いに見える。しかし–こう見せようという作為がない–さまざまな音が聞こえそうな場所を撮っていても、音がしない。では不毛な画面なのかというと全く逆で、何よりもそこには予兆がある。

それは音のでる直前の無音状態に似ている。次には必ず音が出るとわかる一瞬の静寂。そして音が出た途端に色づき、生気を放つ時空間の、その直前を捉えているように私は感じる。–さとう陽子(解説文より)

見慣れた街角の風景を、あたかも耳を澄ますかのように掬い取ってゆく志村。彼は自身の作品に他者が触れることで、とうに忘れてしまっていたかつての記憶が揺り戻されることを期待していると言います。それは写真という過去の記録とともに新しい記憶を生み出すような、創造的な経験となることでしょう。

また、今作にあわせて制作された音響作品も、こちらで聴くことができます。志村の作品世界をより立体的に味わうために、ぜひ写真集を紐解きつつお聴きください。

 

著者: 志村直人
編集: 森下大輔
デザイン: 庄司誠 ebitai design
解説: さとう陽子
言語: 日本語
サイズ: 216×244mm
ページ数: 72
掲載作品数: カラー 36点, モノクロ 13点
製本: 上製本
初版: 60部
価格: ¥4000
ISBN 978-4-9909567-2-1

Leave a Comment