存在するとは別の仕方で

『存在するとは別の仕方で』は、森下大輔にとって四冊目の写真集となります。

本作において、森下はこれまで主な撮影対象としてきた都市を徐々に離れ、目を惹くものの少ない土地を静かに経巡ります。自らの身体を貸し与えるような、空間との対話を通じて現れる作品群は時に明瞭で、時に曖昧で、 ”存在するとは別の仕方で” あるものの手触りを感じさせます。

またその一方で森下は、身の回りにある用を成さないものを素材としたオブジェを制作し、本来写真が焼き付けられるべき暗室の中で撮影された、これまでのストレートフォトとはまったく異なる作品群に着手しました。「自分の身体の中に蓄積された写真の概念を具体的な物として外化し、得体の知れない存在へと発展させる」ことを目論むこのシリーズは、強いイメージでありながら、見るものをどこへも着地させない不穏な感触に満ちており、分からなさの愉悦を滲ませます。

透明な身体は、言葉や物と混じり合う。
そして、分からなさや、得体の知れなさを自らのうちに担保する。
身体は徐々に濁り、本来の透明度を失ってゆく。
だが、そんな濁った身体でなければ、原理から遠く隔たった他の何かに応えることはできない。
すべてが来るのを待っている。瞬間と無限が交わる場所で。

具象性と抽象性の間を絶えず揺れ動く今作において、実作者の森下自身は死の存在を強く感じたと言います。新しいシリーズの不気味さや、取材で訪れた場所の性質に少なからず影響を受けたこともあるでしょうが、何より作品が織りなす空間から、そのような兆しを受け取ったとのことです。

著者: 森下大輔
デザイン: 庄司誠 ebitai design
言語: 日本語/英語
翻訳: Robert Zetzsche
サイズ: 280×223x9mm
ページ数: 96
掲載作品数: モノクロ48点
製本: 並製本/カバー
初版: 300部
価格: ¥3800
2023年8月29日発行
ISBN 978-4-9909567-7-6